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「喜べない国産復帰」という毎日のおかしな記事

 今日の毎日朝刊トップ記事「喜べない国産回帰」には、首をかしげました。

 まず、その記事の一部をご紹介します。

 90年代から急増した中国産の輸入量は、残留農薬問題などの影響で04年以降、減少に転じた。県椎茸(しいたけ)農業協同組合は「国産復権のチャンス」と増産を奨励している。県も08年度から、異業種の企業が農業法人を設立すれば、設備投資費用を最大75%助成する支援策を導入。公共事業削減で経営が苦しくなった建設会社が、廃校となった小学校のグラウンドで栽培を始めるなどの動きも出ている。

 とはいえ、県内の栽培農家の平均年齢は68歳。酪農や他の畑作との複合経営も多いため、シイタケ増産の余力に乏しく、08年の植菌数(植え付けた菌の数)は、昨年比10%増にとどまる。「国産志向」の追い風を産地はまだ生かしきれていない。【後藤逸郎】

異業種の企業が農業法人を設立・・・廃校となった小学校のグラウンドで栽培を始める。

既存農家・・・平均年齢は68歳。酪農や他の畑作との複合経営のため、しいたけ増産の余力に乏しい。

 この二つの対比で、何が言いたいのだと思いますか?私は、小規模かつ複合経営かつ高齢化する個人農家には農業は頼れないことを強調していることから、農業の工場化を目指せと暗にほのめかせているのかもしれないと思いました。

 八面に続く記事は、国産野菜:増産か我慢か 先行き不安の農家苦悩。続けて紹介します。

 中国製冷凍ギョーザによる中毒事件発覚後の国産野菜の不足と高騰は、需要を目の前にしても生産増に応じきれない日本農業の脆弱(ぜいじゃく)さを浮き彫りにした。担い手の高齢化や需要の先行きが読めないことが背景にあるが、安い輸入品に対抗するために進めてきた顧客の囲い込み、高付加価値化の取り組みが、逆に増産の足かせになっている面もある。中国産の激減で、食材を使う側の外食産業や食品加工業者の右往左往も続いており、生産、消費それぞれの現場で混乱が深まっている。【坂井隆之、行友弥】

 ◇「顧客との関係が…」ニンニク栽培の青森・田子

 ニンニク出荷量で全国の約8割を占める青森県。中でも田子(たっこ)町のニンニクは品質の良さで全国的に有名だ。

 地元卸売市場で取引されるニンニクの最高値は1月は1キロあたり2100円だったが、ギョーザ事件をきっかけに急騰。4月には3700円をつけた。

 「一部の組合員が農協を通さず、市場に直接出荷するようになった」とこぼすのは、田子町農協にんにく課の新井田文雄係長(49)だ。同農協は農家の経営安定のため「固定客」を重視。形式上は全農(全国農業協同組合連合会)や首都圏の卸売市場を通すが、実際は年間を通じて特定の顧客に決まった価格で売る契約栽培に近い方式だ。それが「市場に出せば農協の倍の値で売れる」(地元農家)ようになり、浮足立つ農家も現れた。

 6~7月には今年産の収穫も始まるが、販路や価格はほぼ決まっている。目先の利益を追って顧客との約束を破れば、せっかく築き上げてきた信頼関係が崩れる。農協にとって今の高値はむしろ頭痛の種になっている。

 一方、今秋の増産には消極的な農家が多い。約1.5ヘクタールのニンニク畑を持つ田沼誠一さん(58)は「面積を広げるには人を雇う必要があるし、新しい畑は1、2年はいいものが取れない」と話す。種子を買えば10アールあたり60万~70万円かかるなどコストも大きい。

 安い中国産に押され、90年代に一時、1キロ300円台にまで値下がりしたニンニク。最盛期に500戸以上あった田子町のニンニク農家も約230戸に激減した。その経験から得た答えが、高品質のものを固定客に売る現在の手法だ。「高値は長続きしない。中国産が減っても、いずれ別の国から入ってくる」(田沼さん)という警戒感が、農家の慎重姿勢の根底にある。

 

 ◇「ブランド化の好機」サトイモ栽培の千葉・成田

 サトイモの生産量日本一の千葉県。成田市の大木博之さん(47)は、ジャガイモほどの大きさの新品種「ちば丸」の種芋を手に「産地をもう一度作り上げていく最高のチャンス」と力説する。ちば丸は県が10年がかりで開発し、今秋から本格出荷される。中国産の攻勢に苦しんできた生産者が悲願とするブランド確立への第一歩だ。

 大木さんは一度、サトイモ作りを断念している。中国産の輸入急増に加え、皮がむきにくいことなどが敬遠されて消費も低迷、価格が下落した。04年ごろまでには地元集落のサトイモ農家はすべてサツマイモなどに転作した。

 ちば丸は形が丸く皮がむきやすく、ぬめりの少ない食感が「若者の口に合う」(千葉県生産販売振興課)という。昨秋収穫した芋を今年1、2月に試験販売したところ、東京都中央卸売市場の価格(1キロ=260~280円)を大きく上回る300~600円の値がついた。今秋の収穫分は作付け前から引き合いが始まり、既に完売状態だという。

 だが、大木さんらは「極端な品薄の中、ちば丸だからというより、国産ほしさに飛びついただけという可能性もある」と慎重だ。さらに「中国産の輸入量が再び急増しないとも限らない。それでもブランド力で負けないよう腰を据えてやらないと」と付け加えた。サトイモ産地の再生は、今の追い風に乗るだけではおぼつかないと考えるからだ。

毎日新聞 2008年5月5日 21時50分(最終更新 5月5日 22時43分)

 60%以上も外国の食品に頼っているわが国が、中国からの輸入毒餃子事件で、急に多くの国民が国産志向へシフトすれば、急な国内生産がまったく追いつかず食品が不足するのは当たり前の話であるし、そのために混乱が生じるのも当たり前の話であるのに、

 毎日の記事では、「中国産野菜の輸入が減ったが、農家は高齢化していて増産が困難である」とか、「安い輸入野菜に対抗するために進めてきた顧客囲い込みが、逆に増産の足かせになっている」とか、「外食産業や食品加工の現場でも混乱が起きている」とか、書いています。

 シイタケなら収穫までに2年もかかるし、シイタケにしてもサトイモにしてもサツマイモにしても農産物を収穫するには時間がかかり、増産の結果は一年後だったりするので、収穫してみたら生産過剰となっていて価格が大暴落という羽目になることもあります。

 だから、農家が増産に慎重になるのも理解できるし、顧客と契約して販売路を確保しておくというのも農家の知恵であると理解できますよね。

 毎日の記事は、農家と顧客との契約が増産の足かせになるといっているのですが、なぜ足かせになるのかがまったく説明できていません。顧客との契約があったとしても増産はできるはずですね。そして、増産を考えている農家もあると思う。「農家と顧客との契約」で、外食産業や食品加工業者が国産食品を手に入れられなくて困っているから、問題視したのかもしれないと邪推しました。

 増産を目指そうとするなら、政策が必要です。現に、大分県では、08年度から、異業種の企業が農業法人を設立すれば、設備投資費用を最大75%助成する支援策を導入したというから、そういう助成を既存農家にも行えばいいわけです。安心して生産できる環境を作れば農家は生産に励むと思いますね。政策的に何もしないでいて、既存農家に増産できない責めだけを負わすのはあまりにおかしいと思います。

 そして何よりも、まず、日本の農業は、40%以下を生産していたに過ぎないので、そして、ドンドンと政策的に縮小されていった産業なので人が離れていき担い手が少なく高齢化しているのであって、その産業が、毒餃子事件で一躍注目されたからといって、いきなり今すぐ100%の自給率を望まれても無理というもの、ないものねだりであるといっておきます。農家が安心して生産活動が営めるように政策こそが練られ実行されるべきで、そうすれば徐々に増産は計られていくことだと思うし担い手も現れていくことでしょう。

 食料の国産回帰は、農業を活性化する大きな原動力となります。喜べないじゃなくて、喜ばしいのです。

 小規模農家は増産に役立たずのように言っては大規模農業法人への転換を促し、国産復帰を喜べない外食産業や食品加工業者のために「農家と顧客との契約が増産の足かせになる」と書いたような気がしますね。違うかな?

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農業」カテゴリの記事

コメント

農業問題は根が深いです。農水省の過剰な保護と補助金行政で自民党に投票しておれば農家は食えていたわけです。ところが外圧から輸入自由化になり補助金も削減されてしまいました。販売は農協がほぼ独占して携わっていますが将来を見据えたビジョンもなく天下り機関と化して宝石販売までやっている始末です。お役人がその都度通達を出すが農家の実情も把握出来ていないために面子や建前だけの通達や指導が宙を舞うだけですね。
農業政策も年金や医療行政と同じくそのシステムの根幹から改革しないと自給率ゼロに向かって下がり続けるでしょうね。

投稿: みーけ | 2008年5月 7日 (水) 18時57分

みーけさん、

農業問題は、アメリカが日本の食糧を供給する、日本は工業製品を作れとしたところから端を発して、アメリカの意向に従って日本は自給率を下げる政策を取り続けました。それで、現在は40%を切るまでに自給率が下がりました。

自給率を下げるために、減反政策などをしては補助金を出すという具合ですから、前向きな生産に補助金は使われてきませんでした。
ま、それでも、農業従事者は何とか食べてこられたので、お金をくれる自民党に頼り、という具合にお互いにもたれあいの慣習ができたのでしょう。

ホントに農協は天下りとなって、農家の邪魔をしていますよね。
まず、農協をなんとかしなくてはいけないのですが、そのためには、自民党を倒して政権交代が、やっぱりまず最初でしょうか。

いずれにしても、大農家だけが生き残っていくような、農業においても寡占が進むような方向へ入ってほしくないと思っています。

毎日の記事には、既存農家を邪魔者扱いしてどうも大農化へとか外食産業などへ農産物を回したい意図を感じちゃって、気に入りませんでした。

投稿: ふじふじ | 2008年5月 7日 (水) 21時40分

ふじふじのフィルターさま。初めまして。
青空.netの山本玲治と言います。


今、青空.netでは、農業をされている方がもっと元気になるようにと思い、稼ぐネット産直と言うブログを書いています。


そのブログの中で、「JAに出荷するとどうなるの?」という記事を書いたので、関連のあるブログはないかな?と思い、yahooブログで、「農協」について検索したところ、ふじふじのフィルターさまのブログを見つけました。


トラックバックを送らさせていただきましたので、よろしくお願いします。

投稿: 青空.net 玲治 | 2008年5月16日 (金) 07時09分

青空.netの山本玲治さん、はじめまして、ようこそ。

農業がここまで廃れたのは、政策的のせいです。
政策が農業振興させるものとなれば、自然と農業は活性化すると思います。

何よりも国産品が安全であるという認識を毒餃子事件は教えてくれました。これは、農業振興の大きな原動力になると思います。そして、これに政策が加われば、農業は振興していくものと思います。

トラバはできなかったようですが、ブログは読ませていただきました。
日本の農業が元気になるようお互い頑張りましょう。

投稿: ふじふじ | 2008年5月16日 (金) 10時51分

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