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耕作放棄:市町村長の是正勧告をどんどん行って、農業の大規模化?

 減反政策を農家に強いる農水省が、一方では、食料自給率向上のためとして、耕作放棄地を12年をめどにゼロにするとの目標を掲げ、全国の農地一筆ごとの実態調査に今年乗り出したとの記事が、今日の毎日朝刊トップ記事にあったが、とても奇異な感じを持ちながら読んだ。

耕作放棄:市町村長の是正勧告ゼロ…法的歯止め空洞化

 ちなみに、耕作放棄地とは、農水省の定義では、

 「所有する耕地のうち、過去一年以上作付せず、今後数年間再び作付けする意思のない耕地」のことをいう。 

 耕作を放棄している農家には市町村長が法律に基づいて是正を勧告できるが、記録のある97年度以降、勧告は1件も出されていないことが分かった。 勧告の前段階に行われる市町村農業委員会による指導も、対象農地が耕作放棄地全体1%未満にとどまっている。耕作放棄地は埼玉県の面積に匹敵する約38 万ヘクタールとされるが、耕作放棄への法的措置が事実上とられていない実態が浮かんだ。

 耕作放棄行政指導できる制度は、農地利用増進法(現・農業経営基盤強化促進法)で90年に整備された。食料生産を担う農地には公共性があり、農 家の都合だけで耕作しないことを防ぐためだ。農業委員会が農家へ是正を指導し、従わない場合は市町村長が必要な是正措置を勧告することになっている。

 勧告件数について農水省は「97年度以降1件もない」と説明。「96年度以前は記録がないため勧告の有無は不明」としており、90年の法整備以降一度も出されていない可能性がある。

 農水省05年、農業経営基盤強化促進法を改正。農家が是正勧告に従わない場合、知事の判断で他の耕作者に利用させる措置を加えて指導の仕組みを 大幅に強化したが、「勧告ゼロ」は続いている。同省は「指導力が及ばなかった。法改正で強化された措置をとるよう周知しており、結果が出るのはこれから」 と説明している。

 一方、農業委員会による是正指導は、耕作放棄地の増加とともに伸び、05年は全国で1万163件だった。しかし、指導対象の農地面積は495ヘ クタール。05年の農水省の統計「農業センサス」は耕作放棄地を38万6000ヘクタールとしており、全体の0.4%にとどまる。

 農業委員会の上部組織、全国農業会議所の柚木茂夫農地・組織対策部長は「指導件数の数字に表れない相談活動などは相当あると思うが、耕作放棄地に比べて指導面積が少ないのは事実。指導の徹底を求めている」と話している。【奥山智己】

 こういうのをみていると、農水省は自給率向上のため努力しているのではないかと思いがちだが、我が国の自給率は、年々減少し、カロリーベースで37%とか39%とか言われているほどに落ちていることを考えてみれば、農水省の自給率向上の努力は見せかけであり、実は、反対に自給率を減らす努力を長年にわたって続けてきたということが分かる。農水省の自給率を低下させる努力のたまものが、現在の、見かけで37%の自給率である。

 この37%という自給率も、家畜(鶏、牛、豚)が食べている飼料のほとんどが輸入であること、また、作物に施される肥料もまたほとんどが輸入であるということや、動力源を石油とする耕作機械のことを勘案すれば、小池松次さんが言われるように本当の自給率は1%もないというのが、本当の自給率であることは間違いないところだろう。農水省は、食料自給率向上に努力したのではなく、減らすほうに一生懸命に努力したのである。

こちら(新聞「農民」2007.4.9付)も読んでみよう。

 一部引用させていただくと、

 経済財政諮問会議のあきれる議論

 農水省は二月二十六日、経済財政諮問会議のEPA・農業ワーキンググループに、農産物の関税を全廃(完全自由化)した場合、食料自給率が現在の四〇%か ら一二%に下がるとの試算を提出しました。経済財政諮問会議のねらいは、日豪に続いて、日米、日中のEPAの締結に向けた道筋をつけ、財界の要求にもとづ くグローバル化をさらに推進すること。農水省に試算を提出させたのもこの議論の一環であり、極めて危険な事態です。

 

 完全自由化で米、小麦もほぼ壊滅

 試算によると、完全自由化した場合、小麦、甘味資源作物(テンサイ、サトウキビ)、でん粉原料作物(ジャガイモ、サツマイモ)などが壊滅。生乳、牛肉、 豚肉なども一~三割しか残らず、鶏卵、鶏肉、茶、リンゴ、かんきつ類で八~三〇%の減少。米も当面、四割減り、最終的には一割しか残らず、この結果、食料 自給率は一二%まで低下すると見込んでいます。

 また、国内農業の縮小にともなう関連産業の減少額は約九兆円に達し、約三百七十五万人就業機会が失われる恐れがあると予測。農業と地域経済への影響は、想像をはるかに超えます。

 松岡農相は、この試算について、「経済財政諮問会議で総体的な議論をしてもらうため」などと説明。また、財界の「完全自由化論」をけん制するねらいがあ る、という報道もあります。しかし議事録(要旨)を読むかぎり、このねらいは完全に“空振り”。自給率一二%にも「国内生産が結構残るじゃないかという印 象を持っている」(本間正義・東大教授)と、目を疑う発言も出てきます。

 ぜひ、リンク先で全文読んでください。

 ここでは、経済財政諮問会議は、工業品を輸入してもらう代わりに農産物を自由化するという外国とのバーター取引をし、自分たち財界の収入を増やすため食料自給率を捨て去ろうとしているのが読み取れるわけだけど、この方針は、みごとに今年7月に行われたWTO非公式閣僚会議で見ることができた。若林農相(当時)は、重要品目10%死守と言って出かけ、現地に着くなり8%に下方修正、ついにはラミー提案の4%まで落したのであるが、この諮問会議のうんぬんを読めば、これが既定路線だったということがよくわかる。

 農水省は、国内においては、自給率向上を目指すと言い、実際には、自国農業を切り捨てていくという見事な二枚舌農政をしている。

 また、殺人とか殺人未遂と言っていいほどな言語道断な猛毒汚染MA米食用流通事件が最近あったけれど、その事件を起こさせる元となったMA米は、政府やマスコミの報道のようにWTOの決定で最低義務として買わなければならないものではなく、買う機会が提供されるというほどのものであるということをまず知っていただきたい。本当のところは、MA米は、アメリカに買わされているのであって、なおかつアメリカからは国内で流通させろとまで要求されているのであり、もうすでに、実際に流通させていることが、今回の事件で分かったことでもある。

 MA米を輸入するに当たっては、農家には絶対市場に流通させないと農水省は約束していたというのに、これも反故にしたわけで、農水省というところは、国内において、農家や国民向けにいっていることはすべて一時しのぎかウソと見た方がいいのではないだろうか。アメリカに忠誠を誓っていてアメリカの要求に必死に応えるため国民を欺く省庁だと思った方がいいのではないかと思う。国民のために安全な食料を自給しようという意思は微塵も感じられない。

 (新聞「農民」2008.8.25付)を読むと、輸入しているMA米77万トンは、新潟県全体で採れる米が52万トンだということで、いかに大量かということがよくわかる。

 また、農水省は、米の消費が増えているのに、需要を少なく見積もって、農家に減反を迫っている。↓

 農水省が発表した米の需給指針によれば、今年六月までの米の年間消費量八百五十三万トンで前年より十六万トン増えています。しかし来年六月までの需要見通しは八百三十一万トン二十二万トン減少するとの見通しです。

 一方、今年の主食用米の生産量は需要をさらに十六万トンも下回る八百十五万トンにしています。需要減についてまともな理由を示せず、「生産調整も「必要 だ」の一点張りの農水省にたいし、交渉団は「消費が増えているのに、なぜ減らすのか。これでは国産米は不足になる。強制減反はやめよ」と要求しました。

 こういう状況をみると、同じことを何度もいって恐縮ではあるけど、農水省が食料自給率向上を考えているとはとても思えないでしょ。減らそうと考えているとしか思えないことばかりしている。それは、アメリカからの米輸入要求、国内流通要求に応えるためでしかないと思う。

 それで、今回ニュースになっている、90年にできて05年に改正された農業経営基盤強化促進法とは、いかなる法なのか?自給率を減らす努力を長年している農水省が、自給率向上とさせるという国民向けの見せかけの法を作ったのだろうか?という疑問がわいてくるけど、今までの所業を考えると、農家や国民を考えての法を作るだなんてあるはずがないと思う。

 この法の表向き看板は、いつもの「自給率向上を目指す」だけれども、国内農業への補助金を減らして自由競争させ農家の収入を奪っておいて農業を続けられなくなった農家に対して、「農地を手放せ」と要求するようなものというのが実態ではないだろうか。

 農業を続けられなくした農家に、この法によって、農地を手放させる。

 次に、この農地を大量に手に入れたの企業家が農業の大規模化を行い、極端にいえば、モンサントなどの「遺伝子組換え作物」を栽培するとかの農業の工業化を行い、人々の食の安全を担うというより金儲けのための農業がおこなわれ、伝統農業や地域に根差した心のこもった農業が消失し、農村の空洞化をもたらせるということではないだろうか。この法によって、農業が根柢から破壊されそうな気がする。農水省は、農村を本格的に破壊するために、今年から動き始めたということなのじゃないだろうか。警戒が必要だと思う。

 日本の農業は、いよいよ危なくなってきた気がする。早く政権交代をさせて、アメリカに牛耳られた農政を何とかしないと、私たちは国内でも健康に不安な単なる餌としての農産物を食べさせられることになるのではないだろうか。

 最後に。このニュースを読んでみても、地方は中央省庁の支配下に置かれているということがわかる。農水省が作った法で、知事から市町村へ、市町村から農家へと、国からの行政指導が通っていくという、こういう中央集権的な地方自治を損なうシステムになっていること自体が問題なんですよ。

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